アトリエ通信

2022.6June

暮らしと日本国憲法 防衛費の増額は本当に必要?

「憲法と社会福祉の会」はタブーなく何でも思ったことを出し合える場なので、一人では知れなかった情報や考えを知ることができるすごく貴重な場です。5月は軍事よりも、経済や社会保障の話しが出ました。

 ウクライナ侵攻から、各国が軍事費を引き上げするなど国防意識が高まっています。NATO諸国が軍事費のGDP比目標を2%以上に引き上げたのにならって、自民党は「厳しさを増す安全保障環境の下、国民を守るために防衛費の増額が必要」と、GDP2%以上の大幅増を政府に提言しました。2022年度の防衛費はGDP1%=約54000億円。日本の自衛隊の防衛力(軍事力)は世界5位です。自民党の高市氏は「10兆円まで上げる」と言っています。そんなに戦争準備が必要ですか?

 東京新聞が、5兆円の予算を教育や年金、医療など暮らしのために使えば、どのようなことができるのかを試算していました。

教育に使う場合、大学無償化、児童手当の拡充、給食無償化の3つを組み合わせても3兆円台で収まる。

食料品や電気・ガスなどの急激な値上がりに苦しむ年金生活者のために使うとすれば、12万円を上乗せして年金支給することができる。

物価高対策に使うなら、消費税率は10%から8%へと引き下げ。医療に使う場合は自己負担をほぼゼロにできる。こんなに国民の日常生活を防衛できるのです!

 共産党は「軍事費2倍というのは生易しい額ではない。5兆円を医療費負担にかぶせるとしたら、現役世代は3割負担が6割になる。国民の暮らしをつぶす」と批判しました。

 統計データ分析家の本川裕さんによると、世界的な軍備拡大の状況変化は、本当にウクライナ問題が原因だろうか?むしろ、貧富の格差、産業空洞化、移民問題、国際テロ、地球環境の悪化など、グローバル社会のマイナス面が、世界中で国防意識の高まりとなり刺激となって、ロシアのウクライナ進攻も、各国の反応も起こったのではないかと分析しています。世界の数十か国の大学研究機関のグループが、「世界価値観調査」で『国のために戦いますか』という共通の問いを投げかけた結果、2010年の金融危機後、国防意識の上昇がみられる国が増えている中で、日本人は「はい」と答える人が13%「いいえ」が49%「わからない」が38%でした。世界最低の国防意識と無関心さが日本の特徴として表れました。

  7月に参院選があります。この参院選で自民党が勝てば、次の選挙が行われるまでの3年、安定した政権運営ができるようになります。それは、「黄金の3年間」と言われ、自民党は、結党以来の悲願である、憲法改正に向けて全力で取り組んでいくと言っています。(防衛力にますます力が入ることになる)

「コロナで国民の生活は委縮し、物価高で生活苦に沈む年金生活者やワーキングプアはあふれている」「防衛装備より環境問題や貧困・格差問題に充てるべきだ」という国民の声。今の日本の現状は、戦争状態と同じです。国外から攻撃されるより前に、暮らしを改善することが先なのに、それでも我慢して、軍事費に予算を付けて、後世に負担させますか?

そして、憲法改正してまで、軍隊を持つ国にしますか?それを問われています。    文:大井恭子

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