2018年6月

  醤油づくりから「和」を学ぶ
今回「醤油」を取り上げたのは、当局に来られる患者さんに「古くからの木桶仕込みの醤油の伝統を守り
続けている醤油屋さんに見学に行きませんか?」と誘われたのがきっかけでした。

その際見学した「ヤマロク醤油」jは全て木桶仕込み。伝統製法を守るか、大量生産の現代の醤油づくりに
切り替えるかと選択を迫られた時期もあったが、伝統製法を守ることを決断したメーカーです。
 
なぜ木桶にこだわるのか?それは「発酵」と「菌」との壮大な関係性にあります。1つの桶は100年以上使われ、その桶の小さな隙間に微生物(菌)が住み着くことで醤油に個性を作っていく。菌は蔵の全体の土壁や柱にも住み着き、蔵全体が独特の生態系を持つようになる。醤油の蔵ごとに住み着く菌が異なっていくので、蔵ごとの味や香りの特徴ができる。

蔵人は醤油をおいしくする菌以上に、邪魔をする微生物に気を遣う。その邪魔をする菌を排除するのではなく、増え過ぎないように蔵全体の管理に手間をかける。同じ蔵の中でも樽毎に発酵の進み具合が異なり、味や香りに変化ができる。多様性を重視する。

だから、企業秘密などない。他の蔵が同じことをしても、同じ味の醤油ができることはない。そのため他の蔵と情報交換し、お互いに高めあったり手伝いもする。多様性を育む文化となる。
 
木桶仕込みもステンレス仕込みも一長一短があり、様々な料理に合わせて用いれば良いと私は思います。少しのかけ醤油には木桶仕込み。どぼどぼと使う時には食材の旨味も加わるので、主張しないステンレス仕込みというように。和食の達人は、特徴のある木桶醤油を使いこなすことで、素材の味を引き立たせる繊細な表現をする。それもその店の特徴となる。

醤油には、味の五大要素である「旨味、甘味、塩味、苦味、酸味」を兼ね備え、一体となって様々な効果を生み、料理に深みを与えていきます。日本の国菌の麹菌が無数の酵素を生み、乳酸菌と酵母菌が絶妙にバトンタッチしながら大豆と小麦に含まれる成分を3ヶ月から数年かけて分解し、味や香りを生み出す。そしてそれらの成分が作用し合い、調和のとれた味や香りになっていきます。

「和」という字は「あえる」とも読む。純粋なものに雑味や相反するものなどをうまいこと和わせて、その時代時代に途切れることなく伝承されている。その可変性と柔軟性こそが「和」ではないかとも思います。