2019年6月

  半夏の頃
 「半夏生」は「雑節」の1つで、(「雑節」というのは日本で生まれた季節の目安となる日)漢方薬でもよく使う「半夏」が生える頃を言い、ちょうど夏の半ばに当たるので、「半夏」と言われるようになりました。この頃は、梅雨が終わる頃にあたり、大雨が降りやすくなるので警戒するように!と促す目安でした。(昨年の豪雨災害もちょうどこの頃です)また、梅雨明け間近になるのでこのころまでに田植えを終えるように!とされています。

「半夏」とは、
サトイモ科のカラスビシャクの根茎のことです。生薬の半夏は、その根茎の外皮を外して乾燥させたもので、漢方処方の3割ぐらいに用いられる有名な生薬です。湿気により停滞しているものを動かし、痰や苦しみを取り除く役目があります。気のうっ滞、水のうっ滞(湿痰)を取り除いてくれます。大雨で「湿」の様々な問題の頃に、採取できてよく用いられる生薬です。そのため、暦の中にまで入れられた生薬です。
  カラスビシャク

半夏別名:
へそくり

へそのようにくぼんだ姿から別名「へそくり」という
      半化粧
 ドクダミ科の植物
 半夏とは異なる

花が咲く頃に葉の一部が化粧したように白くなるので半分化粧した「半化粧」と言われます。
これは半夏が咲く頃に咲き、半分化粧したようだから「半化粧」というネーミング。
 時々、暦の本を見ていますと「半夏生」のことを右の写真の「半化粧」の植物と間違って書かれていることがあります。暦の智慧が薄れてきていることでしょうか? 

<半夏を使った漢方処方の一例>
半夏厚朴湯…上腹部膨満感やつかえ、のどの詰まりなどの気滞の症状をともなう咳、咽喉部の
        刺激感
、嗄声、胸部が張って苦しい時などによく処方されます。ゆううつ感、抑うつ感
         を緩解し、自立神経系の緊張をゆるめ、半夏が鎮静に働きます。

半夏瀉心湯…食べ過ぎ、飲み過ぎのため、あるいはそれにストレス的なものが加わると、みぞおち
        の
あたりがつかえます。半夏は、自律神経を安定させ、乾姜、甘草、大棗は、胃に
         停滞している水分を尿として流し、水分代謝をよくして、吐き気、ゲップ、腹鳴、下痢
         などの
胃腸症状を緩和します。

半夏白朮天麻湯頭がふらつく・頭が重くなる・目がくらむ、甚だしければ回転性めまい発作
         で立っていられないなど、天気の悪化によって症状が出てくるときに用います。

このように、昔から季節の特徴にあった処方を、生薬を探し試行錯誤で作り対応しました。今では
逆に、この薬草が生える頃だから、その薬草が役立つ症状が出やすいと注意します。自然が教え
てくれているように!

この半夏生の時は、昔の農家では物忌みの日といわれました。この期間は『天から毒が下りて
来る
』と言われ、心に毒気が入り込んでくると言い伝えられていますので、
「半夏生の日から5日
間は休む」
という習慣があります。昔の田植えは素足で水につかりながら手植えをするため、水の
影響を受けて『湿気』の病気を持ちやすくなる。田植えの疲れをとらないと土用に体調を崩してしま
うため、
『せめて5日間は休むように』と、注意を喚起する意味で定められていました。

しかし、農家の人は働き者で、農作業ができない間は半夏(=別名へそくり)を」掘り起こし、漢方屋
さんに売っていた。農家としては臨時収入にもなるので、この収入を「へそくり」といい、今の「へそ
くり」の語源になっています。

「天から毒が降ってくる」とまで言われても休まない日本人の様子は現代に置き換えてもあまり変
わりません。注意警告を与えても、言う事をきく人は少ないし、失敗して初めて気付くようです。
しかし、当薬局ではどんなに養生に失敗して来られてもしっかりと対応しますので、安心してご
来局ください。